今日もドラッカーの著書「【エッセンシャル版】マネジメント」の内容から、気になったところを紹介する。
今日の内容は、仕事とは何か、労働とは何かを根本的に考え直すきっかけになるはずだ。
この問題について、頭の中を整理しておくことは、経営者はもとより、自分の人生を幸せなものしたいと願う人にとって、とても有意義なことだと思う。
この著書の中で、ドラッカーは仕事とは何なのか、ということに言及している。
人によって仕事観は違う、という話を、このブログの中でも何度も指摘してきた。
どのような仕事観を持っても、その人の勝手だし、正解はない。
それは、主観的な仕事観の話だ。
ドラッカーは、より客観的に、仕事とは何か、という問題について言及している。
仕事には様々な側面があり、どれか正解というものではなく、仕事とはそれくらい複雑なものであるということがわかる。
仕事と労働の違いについて
ドラッカーは仕事と労働（働くこと）は根本的に違うと述べている。
仕事とは、一般的かつ客観的な存在である。それは課題である。存在するものである。したがって仕事には、ものに対するアプローチをそのまま適用できる。そこには論理がある。それは分析と総合の管理の対象となる。〈中略〉これに対して、働くことすなわち労働は人の活動である。人の本性でもある。論理ではない。力学である。
言葉遣いが難しいが、仕事はそこに厳然と存在している課題で、その課題を解消するための人の活動が労働であるということだ。
少なくとも、私はこの二つの違いについて深く考えたことはなかった。
確かに、言われてみれば、ドラッカーの言うような違いがある。
さらに、興味深いことに、ドラッカーは次のように述べている。
仕事をするのは人であって、仕事は常に人が働くことによって行われる。しかし、仕事の生産性をあげるうえで必要なものと、人が生き生きと働くうえで必要なものは違う。〈中略〉働くものが満足しても、仕事が生産的に行われなければ失敗である。逆に仕事が生産的に行われても、人が生き生きと働けなければ失敗である。
働く者の満足と、仕事が生産的にわれること、その両方が行われては初めて、成功だと言えると述べている。
これは、誰かの犠牲や我慢のもとに行われた仕事は失敗だと述べているのだと思う。
確かにその通りだ、この両立を実現することがとても難しいし、それがビジネスの難しさということなのだろう。
働く人が生きがいを感じ、生き生きと働き、しかもきちんと仕事（課題）を解消し、利益をあげていく。
それが行われた時、そのビジネスは成功したと言えるのだろう。
労働の五つの次元
さらに、ドラッカーは、労働には五つの次元があると述べている。
その五つの次元について、紹介しようと思う。
①生理的な次元
①生理的な次元がある。人は機械ではないし、機械のように働きもしない。一つの動作しかさせられないと著しく疲労する。心理的な退屈だけでなく、生理的な疲労がある。乳酸がたまり、視力が落る。反応が遅くなる。単一の作業よりも、いくつかの作業を組み合わせたほうがよく働ける。それだけでなく、人は同じスピードとリズムで働くことに適さない。スピードとリズムを変えるとき、よく働ける。しかも、あらゆる人にとって共通のスピード、あるべきリズムというものはない。スピード、リズム、持続力は人によって違う。幼児についての研究でも、スピード、リズム、パターンは、指紋のように違うことが明らかになっている。仕事は均一に設計しなければならないが、労働には多様性を持たせなければならない。スピード、リズム、持続時間を変える余地を残しておかなければならない。仕事の手順も頻繁に変えなければならない。仕事にとって優れたインダストリアル・エンジニアリングであっても、人にとっては最悪のヒューマン・エンジニアリングとなる。
ドラッカーは、人間は機械と同じようには働けないと述べている。
この問題は、あのチャップリンが映画「モダンタイムス」で表現した、古くて新しい問題だ。
古くから指摘されてきた問題でもあるはずなのに、現代社会は、未だにこの問題を解決できていないではないかと思う。
この問題は、僕が、整体師であり、心理カウンセラーであることから、常に問題意識を持っているところだ。
人間は機械とは違う、他人と同じリズムでは働けない。
しかし、人は他人と比較して、同じようにできないと叱責され、自分でも自分を責めて、それが原因で心を病む。
この問題は、人間が機械ではなく、生身の生き物であるという、動かしがたい現実の上に存在しているのであるから、人間が働きやすいような仕事の進め方を工夫することでしか解決できないはずなのだ。
それを実現するのは、マネジメント側からすれば、なかなかの難問なのだけれど、その問題を解決するのがマネジメントの仕事であるはずだ。
それをせずに、働く人たちに無理を強いるのは、マネジメントの怠慢なのではないだろうか？
②心理的な次元
②心理的な次元がある。人にとって、働くことは重荷であるとともに本性である。呪いであるとともに祝福である。それは人格の延長である。自己実現である。自らを定義し、自らの価値を測り、自らの人間性を知るための手段である。
この表現は、面白いと思った。
人にとって労働は、そもそも二つの側面を併せ持っている者であって、どちらが正しいというものではないということだ。
ドラッカーはそれを「重荷と本性」「呪いと祝福」という言葉を使て表現している。
僕は、「苦役と自己実現」という言葉を使うことが多い。
言葉は違うけれども、確かに労働には全く正反対の二面性があるのだ。
つい「どちらが正しいのか」と考えがちなのだけれど、「どちらか一方が正しいのではなく、どちらも労働がもつ側面である」ということを認める必要がある。
そのうえで改めて「自分の中でどのように認知するか」がとても大切で、その認知の仕方によって、人生が大きく変わるだろうということは容易に想像がつく。
その認知の仕方は、自分が能動的に選ぶこともできるはずだ。
その認知の仕方は、自分が能動的に選ぶこともできるはずだ。
③社会的な次元
③社会的な次元がある。組織社会では、働くことが人と社会をつなぐ主たる絆となる。社会における位置づけまで決める。
仕事を引退した人や、子育てのために仕事を辞めた若い母親、引きこもりの人たちが、社会とのつながりを感じられなくなり、孤独感に苛まれることは多い。
仕事を通じて、社会とつながり、自分が社会に対して貢献できているという実感を持つ、ということはとても大切なことだと思う。
仕事を通じて社会とつながることが、その人が生きていく糧となる。
人生100年時代と言われるようになってきた。
100年というのは大げさだと思うけれども、寿命が長くなってきたのは間違いない。
長くなった老後をどう過ごすか、という問題を考えるとき、労働をするというのもとても重要な選択肢の一つであるだろう。
100年というのは大げさだと思うけれども、寿命が長くなってきたのは間違いない。
長くなった老後をどう過ごすか、という問題を考えるとき、労働をするというのもとても重要な選択肢の一つであるだろう。
④経済的な次元
④経済的な次元がある。労働は生計の資（かて）である。存在の経済的な基盤である。
これは特に僕の説明など必要はないだろう。
生活するための資金を得る。ビジネスを続けるための資金を得る。将来のリスクに備える。そのために働くのである。
⑤政治的な次元
⑤政治的な次元がある。集団内、特に組織内で働くことには、権力関係が伴う。組織では、誰かが職務を設計し、組み立て、割り当てる。労働は、順序に従って遂行される。組織の中で、人は昇進したりしなかったりする。こうして誰かが権力を行使する。
これについても、特に説明の必要もないだろう。
もちろん、国家も組織だと言える。
国の政治も、社内政治も、誰かがその組織を動かす役割を担わなければならない。
労働の五つの次元について知っておくべきだ
ドラッカーはこの労働の五つの次元について、「これまでのアプローチの誤りは、これらの次元の一つだけを唯一のものとしたところにあった。」と述べている。
僕は、この部分を読んで、はっとした。
確かにそうだ、物事にはいろいろな側面があるのが普通である。
たくさんある側面の内、どれが唯一正解で、あとは間違えていると考えることはナンセンスだ。
たくさんある側面の内、どれが唯一正解で、あとは間違えていると考えることはナンセンスだ。
例えば、僕には、整体師、心理カウンセラー、経営者、父親、夫、子ども、消費者など、いろんな側面を持っているが、どれが唯一本当の自分なのか、と問われても、そんな問い自体がナンセンスであるのと同じだと思う。
そして、この五つの次元を知ったうえで、マネジメントを行う必要があるのだ。
それはとても大変なことだとは思うけれども、それは、経営者としての責務なのではないだろうか。
まとめ
仕事と労働の違い、労働の五つの次元について、ドラッカーの考察は素晴らしいと思った。
僕自身もとても勉強になった。
あらゆる側面から客観的に、仕事と労働についてみる目を養う必要があると思う。
その事を理解してうえで、自分にとっての労働は何なのか。
自分の人生において、労働とはどういうものなのかを改めて考えてみる必要があるのではないだろうか。
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